380億ドル(約4兆円)を超える価値の世界的な小売り帝国を率いるフランスのミュリエ家の人々は数年前、気候変動についてもっと真剣に受け止めるべきだと決めた。つまり、何百人もの親族から成る一族の投資ポートフォリオにそうした意識を反映させるということだ。
しかし、どこから始めてよいか分からなかった。気候変動との闘いで企業が温暖化ガス排出量削減あるいは大気中の二酸化炭素回収に取り組めば、経済のほとんど全てのセクターで変化が起こり得る。ミュリエ家のファミリーオフィス、クレアデブのマネジングディレクター、デルフィーヌ・デカン氏は「この分野は非常に幅広く複雑だ」と言う。
同氏がその時に会ったのが、 クレオ・シンジケートという小規模で秘密に包まれた非営利団体の責任者レジーヌ・クレマン氏だ。気候変動に関心のある投資家だけの会員制クラブであるクレオの使命は、地球温暖化を遅らせるのに役立つ投資への資金の流れを加速させることだ。クレオは超富裕層のみをメンバーとし、約200ファミリーとの協力の下、8000億ドル余りを運用している。
資産運用会社 GMOの共同創業者ジェレミー・ グランサム氏やルネサンス・テクノロジーズ創業者ジェームズ・サイモンズ氏の息子のナット・サイモンズ氏ら著名投資家が参加している。クレマン氏によれば、メンバーは「非常に理にかなった」額の会費を支払う。この会費がクレオの収入の半分を占めるという。メンバーになるにはまた、真剣であることを示すために気候変動やサステナビリティー(持続可能性)に関連する最初の投資を6カ月以内に行うよう計画しなければならない。1億ドル以上の資産を持ちクレオの理事会によって承認されることも必要だ。
ミュリエ家がクレオに加わると、気候変動関連投資について経験豊富な専門家および他のファミリーオフィスに紹介された。他のファミリーオフィスはそれまでに学んだことについて驚くほど率直だった。注意深く選ばれた少人数でのオンラインセミナーや会合で、メンバーらは排出量を抑えながらも増える人口を養うための農業やその他の分野の改革について話し合う。「人々は投資について、何がうまくいって何がうまくいかなかったか、オープンに話す」とクレマン氏は述べた。
「慈善事業ではなく投資」
非営利団体で自前の資金は持たないものの、クレオは投資銀行のような役割を果たす。年間300件ほどの案件を入念に検証し、投資家たちをパートナー候補と引き合わせ、技術的な調査を行う。メンバーは電池や水素燃料、農地再生、環境に配慮したパッケージなどさまざまなプロジェクトに投資してきた。ポートフォリオには炭素回収のようなまだ確立されていない技術や核融合炉のような未来のプロジェクトが含まれる。
クレオのメンバーらは気候変動を防ぐと同時に利益につながるさまざまな投資を行う。「慈善事業ではなく投資だ」とクレマン氏は説明する。超富裕層の一族は資金を未来の世代のために運用するという普通の人にはできないことができる。投資が成果を生むまで10年待ってもかまわない。欧州のメンバーには数百年前から続く家系の富豪もいる。こうした一族は「当然、長期でものを考えようとする」と同氏は指摘した。
ミュリエ家はフランスの大手スーパーマーケットチェーン、オーシャンを保有。仏版ウォルマートだ。他のクレオメンバーとの対話の結果、ミュリエ家は食べ物をポートフォリオの焦点とすることにした。農業は世界の 温暖化ガス排出の約10%を占める。良い農業は汚染を減らすと同時に地中に炭素を閉じ込めることで気候変動を防ぐことができる。持続可能な「水産養殖」は他の方法に比べてはるかに少ない汚染でタンパク質需要を満たすことができる。ミュリエ家は都会の屋内農業を手掛ける ゴッサム・グリーンズと、ハイテク養殖場を運営するキングフィッシュ・ゼーラント、養殖の餌として昆虫を育てるイノバフィードに投資した。
メンバー募集せず
気候に関心を持つ2つの投資家ネットワークの合併で5年前にクレオが誕生した時は、同じ目標を持つファミリーの非公式の集まりにすぎなかった。2016年に初代の最高経営責任者(CEO)に就任したクレマン氏がそれを「強力なプラットフォームに転換させた」と、共同理事長のジェーソン・スコット氏が語った。
4年の間にメンバーは4倍に増え、メンバーと関連会社の資産は16年の1000億ドル弱から8倍に増えた。クレオはメンバーを募集することはしない。「紹介を通じてのみメンバーを増やしている」とクレマン氏が述べた。富裕層との間で信頼を築く方法の1つが秘密を守ることだ。メンバーにはグランサム氏とサイモンズ氏のほかにも著名な富豪がいるが、クレオはこうした人々の名前を明らかにしない。「観光客はお断り」がモットーだ。
メンバーらによれば、クレオの成功の鍵は超富裕層の投資家を対面であるいはオンラインで引き合わせることだ。こうしたファミリーが通常は互いに売り込みなどしないことと、クレオがどのような案件についても手数料を取らないこともプラスになっている。
クレオメンバーの投資は利益を生んでいる。企業価値が最近33億ドルと評価されたバッテリー技術の クアンタムスケープには、サイモンズ氏が共同創業したプレリュード・ベンチャーズと別のクレオメンバーのカプリコーン・インベストメント・グループが初期に投資していた。クレオメンバーはまた、株価が今年大きく上昇した テスラと ビヨンド・ミートに早くから投資していた。こうした成功が、懐疑的なファミリーメンバーやアドバイザーに、クレオに何ができるかを納得させるのに役立っている。
原題: The Secret Club for Billionaires Who Care About Climate Change(抜粋)
November 18, 2020 at 08:09AM
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