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メンバーの才能を最大限引き出すために企業に必要なこととは? - 「HRアワード2021」受賞メンバー特別対談 - マイナビニュース

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人・組織に関わる領域において、企業や個人の成長を促す取り組みを表彰する「HRアワード」。今回「HRアワード2021」プロフェッショナル部門を受賞した株式会社フライヤー 代表取締役CEO・大賀康氏(本の要約サービスflierを運営)、書籍部門を受賞した株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO・安斎勇樹氏(『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』著者)、株式会社ZENTech取締役・石井遼介氏(『心理的安全性のつくりかた』著者)の3名が、理想的な組織やチームづくりに何が必要なのかを語り尽くします。

メンバーが個々の才能を発揮できる環境をつくるために、リーダーはどんな役割を果たせばよいのでしょうか?

▼プロフィール

大賀康史氏
株式会社フライヤー代表取締役CEO
flier法人版が「HRアワード2021」プロフェッショナル部門 人材開発・育成部門 最優秀賞を受賞。

安斎勇樹氏
株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO
東京大学大学院 情報学環 特任助教
『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』著者で「HRアワード2021」書籍部門 最優秀賞を受賞。

石井遼介氏
株式会社ZENTech 取締役
一般社団法人 日本認知科学研究所 理事
『心理的安全性のつくりかた』著者で「HRアワード2021」書籍部門 優秀賞、読者が選ぶビジネス書グランプリ2021「マネジメント部門賞」を受賞。

個人が輝くには「チーム」に目を向ける必要がある

大賀康史氏(以下、大賀):お二人のご著書の影響もあって、日本の企業でも「創造的対話」や「心理的安全性」という言葉が広がってきました。ご著書を読み返してみて、お二人の世界観には共通項があるように感じましたが、いかがですか。

石井遼介氏(以下、石井):そうですね。安斎さんも私も関心の起点が「個人が輝いて生きるためには?」という問いにあるので、近しいものを感じます。ちょうど安斎さんの新著『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)で紹介されていた、吃音の特性をもっている小学生の男の子のエピソードが印象的でした。

安斎勇樹氏(以下、安斎):大学生の頃、子どもたちが自由に才能を発揮できる場をつくりたいと考え、ワークショップを開催していました。そのとき毎回参加してくれていたA君は、自己紹介で言葉がつっかえてしまい、うまく話せずにいたのです。ところが、あるワークショップで「小さい頃に夢中になっていた遊び」を問いかけたら、A君がローカルな遊びについて話しはじめました。他の参加者から注目を浴び、A君は大人が驚くようなアイデアを次々に提案したんです。おそらく、これまで抑圧されてきた才能が、日常とは違った「問いかけ」によって一気に覚醒したのでしょう。

それ以来、ささいなきっかけで人のポテンシャルが解き放たれ開花する瞬間にとりつかれました。そのメカニズムを解き明かそうと、大学院では「問いかけ」の技術と効果について認知科学的に研究する道を選びました。

石井:個人の才能が解き放たれる瞬間をつくるには、個人だけを扱っていてもうまくいかない。その人の置かれている環境やチームに目を向ける必要があります。

同様に、メンバーを変えたいのなら、リーダーはメンバーだけに目を向けていてはいけません。自分自身にも目を向け、変わろうという心構えがあるからこそ、相互作用を通じてお互いが成長していけるんです。

大賀:本の要約サービスflierも、個人のユーザーだけでなく、「法人版」という形で企業のみなさんに使っていただくことで人材開発・育成部門での最優秀賞受賞という機会をもらいました。flierを通じて組織やチームが「本の知」にふれることで、ますます力を発揮するサポートになればという思いがあります。

私自身、会社経営をするなかでリーダーの役割について日々考えているのですが、心理的安全性の高いチームのリーダーはどんなことを心がけているのでしょうか。

石井:逆のケースを考えるとイメージしやすいかもしれません。心理的安全性が低いチームでは、罰や不安が蔓延していて、リーダーが自分の考えにとらわれてしまっている。心理的安全性が高いチームをつくるのは、その真逆の、しなやかな行動がとれるリーダーです。自著でも、リーダーとしての心のしなやかさを意味する「心理的柔軟性」は、チームの心理的安全性に影響すると書きました。

しなやかにリーダーシップを発揮するためのポイントは、リーダー自らが、「自分自身も問題の中にいられる」ことです。つい私たちは、自らがマネジメントする組織やチームのことにもかかわらず、「彼ら」に問題があるとして、自分を問題の外に置いてしまいます。一方的に問題があるとみなされた「彼ら」の立場に立つと、そんなリーダーとともに良い組織、良いチームをつくるのは、やはり難しい。自分自身も問題の中にいれたほうが、問題の認識も解決もしやすくなります。

安斎:なるほど。私が代表を務めるMIMIGURIでは組織開発の相談を受けていますが、経営者や人事担当者が「ボトムアップで対話をしてね」と現場に振って終わりという場面にしばしば出くわします。これは、経営者や人事担当者が自身を「組織の課題」の外に置いてしまっている状態です。でも本来なら、経営層でもメンバーでも、変革の当事者という意識があってはじめて他者を巻き込めるはずですよね。

心理的安全性の高いチームには「共通のこだわり」がある

大賀:組織やチームで心理的安全性が担保され、意見を言いやすくなっても、すぐにメンバー同士の化学反応が起きるわけではありません。創造的対話を生み出すうえで、リーダーやメンバーは何を意識するとよいでしょうか。

安斎:大事なのは、個々人のこだわりをチームで共有して、共通のこだわりをつくっていくことです。自分のこだわりは自身を支える足場のようなもの。普段は目に見えないし、表層に出ている違いにばかり目を向けていると、つい「理解し合えないのではないか」とネガティブなシミュレーションをしてしまいがち。ですが、違いの背景にある相手のこだわりがわかれば、「そうしたこだわりがあるなら、こう考えるのもわかる」と歩み寄りやすくなります。こうして「チーム共通のこだわり」をつくっていくのが創造的対話の第一歩といえるでしょう。

大賀:なるほど。異なる意見をもとに一段上のアイデアへ昇華させるには抽象化が必要になるものです。そのために、まずは各自の違いの背景を理解して、それから抽象化するプロセスが大事なのですね。

才能のありかを知るカギ、「リサーチ・クエスチョン」

大賀:個人の人生だけでなく経営においても、スティーブ・ジョブズのいう“Connecting the dots(点と点をつなげる)”が大事ですよね。そのためには個々の点にあたる人材の育成が不可欠だととらえています。一人一人の才能が開花する瞬間をどう促せばいいのか、お二人の考えをお聞きしたいです。

石井:やはりアサイン、つまり配置こそが人の成長を促します。その人が育つ機会を提供することですね。「責任感」をもたせようとあれこれ指示するのではなく、例えばリーダー職にアサインして、実際に責任をもってもらうとか。もちろん、アサインする役割はその人のこだわりや才能に合っている必要があります。もし才能とずれていたら、上長や人事としては「もっと輝ける場所があるのではないか?」と考え、その役割を「剥がす」ことも時には必要になります。

大賀:それぞれのメンバーがどんな才能をもち、どこにエネルギーを注げるかを観察し、柔軟に配置するという発想ですね。

安斎:ベンチャー企業の評価制度策定のコンサルティングを行っていて気づいたことがあります。一口に「メンバー」「マネージャー」といっても、その中にはいくつかの発達段階があります。

たとえば、自分の専門性が確立して事業や企業理念に直接貢献できる一人前メンバーもいれば、セルフマネジメントで手一杯のジュニアメンバーもいます。ところが、ベンチャーでは人材評価の解像度が粗いため、ジュニアメンバーにも「あなたは何者になりたいのか」「この会社にどう貢献したいのか」と、一人前のメンバーかのように接しがちです。そうすると自分の専門性がわからず居場所を見失ってしまうおそれがあります。ジュニアメンバーには、まずは自分の「タスク」に、自分の技術を通して向き合う支援と承認が必要です。そうして「自分はこの組織にいていいんだ」と居場所を実感できてはじめて、自分なりのこだわりや専門性を磨き、チームに貢献するフェーズにいけるんです。

石井:たしかに大学1年生から「何でも研究していいよ」といわれても戸惑うし、論文の書き方を学ぶのが先ですよね。

安斎:もちろん、タスクをこなしチームに貢献をするなかで、自分のどんな個性が発露していたのかを振り返ることは大切です。MIMIGURIでは各メンバーが、何を探究したいのかという「リサーチ・クエスチョン(探究の問い)」を設定しています。定期面談ではリサーチ・クエスチョンについてどれだけ探究できたのかを振り返っていて、人事評価でも加味されます。このリサーチ・クエスチョンも個々のキャリア発達段階に応じた粒度にすることが大事だと考えています。

大賀:フライヤーでもマネージャーとメンバーとの間で1on1を行っています。どうしても話題が目の前の業務や目標のことばかりになるため、個々人が中長期的に何をやりたいのかを対話できるといいなと考えています。このリサーチ・クエスチョンを取り入れてみても面白そうです。

メンバーの才能が輝く瞬間を「動詞」で表してみる

大賀:これまで組織やチームの観点でお話してきましたが、最後に個人の観点で問いかけてみたいです。人生100年時代といわれ、自律的な学びが必要とされる現在、どんなテーマや学び方を意識していくとよいでしょうか。

石井:おすすめは、自分の強みが発揮できている瞬間を「動詞」で表すことです。「価値づけされた行動」という言い方をしますが、息をするかのようにできていることや見返りがなくても楽に続けられていること、つまり「すること自体からの楽しさが得られる行動」はありませんか? それを動詞で言語化してみるんです。私の場合は「説明する」ことが好きなので、本を書くとき、研修・講演をするとき、企画提案をするときも「説明する」という動詞を軸にしています。「見る」「聞く」などシンプルな動詞であることがポイントです。自分やメンバーの価値行動がわかることで、自分の苦手も得意なメンバーに頼れたり、アサインに活用したりすることができます。

安斎:今後の学習戦略は「勉強」から「探究」に切り替えていく必要があると考えています。これまではゴールが明確で、そこに向かうための方策を絞り込み、実践することが重視されていた。ですが現在は環境変化が激しく、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社刊)でもスキルの賞味期限が短くなっているとあります。そこで求められるのは、いわゆる「選択と集中」ではなく「分散投資」の発想です。

学習の中心に「明らかにしたい問い」を据えつつも、色々なテーマの知識を増やしていく。そのプロセスで問いが磨かれていきます。イノベーション研究で重要な理論とされる「両利きの経営」では、組織の戦略として「知の深化」と「知の探索」の両方が重要だと説かれていますが、これは個人のキャリア戦略にも有効です。

大賀:面白いですね。ある分野について知りたいとき、その分野の周辺知識があるといっそう興味が深まるという実感があります。日頃から色々な分野を学んでいると、新たな学びとの接続点が増えるので、学ぶ動機を見出しやすくなるなと。自ら設定したテーマを掘り下げるうちに、周辺テーマが知りたくなるパターンもあるでしょう。逆に、あらかじめ関心の網を広く張っておいて、少しずつかじっていくうちに、本来深めたかったテーマの知が深化するパターンもある。この2つの方向性の学びを実践していくと、世の中が良い方向へ変わっていくと思います。

我々もflierの「本の要約」を通じて気軽に本の「知」に触れていただくことで、幅広い分野での知的好奇心を刺激できればと考えています。

石井:ある上場企業の社長は、新聞の書評で紹介されている本を片っ端から手にとって開いてみるそうです。あえて興味の外にあるテーマの良質なレコメンドにふれることが、自分の器を広げるきっかけになるのでしょうね。

大賀:flierもまさにそうした良質なレコメンドの役割を果たせたらという思いでいます。

安斎:探究は自分の「こだわり」を掘り下げることですが、それは「とらわれ」のはじまりでもあります。チームのポテンシャルが発揮されている状態をつくるカギは「チーム共通のこだわり」を見つけることだといいましたが、同時に「とらわれ」を疑い、問い直すことも必要です。両者を循環させながら実現するためにも、多面的な分散投資をおすすめします。


「HRアワード2021」書籍部門 最優秀賞『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』

組織変革、学校教育、商品開発などさまざまな場面で求められ、創造的対話のトリガーとなる「問い」のデザイン。メンバーの心に火をつけ、チームの成果を出すワークショップの極意を体系的に学べる一冊です。

「HRアワード2021」書籍部門 優秀賞『心理的安全性のつくりかた』

心理的安全な職場とは「ヌルい職場」ではなく、目標達成に向けて健全な衝突が起こる職場のことです。「心理的安全性の高いチームをつくるには?」という問いに、研究と現場の両方の観点からわかりやすく答えてくれます。

「HRアワード2021」プロフェッショナル部門 人材開発・育成部門 最優秀賞「flier法人版」

flier(フライヤー)は、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供している要約サービスです。通勤や休憩などのスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけることができます。近年、企業で人材育成に活用されるケースが増え、2021年12月現在、440社を超える法人で利用されています。

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December 28, 2021 at 02:00PM
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