
(小林 麻理:社会保険労務士) 経団連「2020年版 経営労働政策特別委員会報告(以下、経団連2020年版報告)」の「転換期を迎えている日本型雇用システム」の章において、従来の「メンバーシップ型」だけでなく「ジョブ型」*1 の雇用区分も組み合わせて検討することが提唱された。 下図は、採用の基本方針に関する経団連の調査結果(2019年)である。 【グラフ】採用の基本方針に関する経団連の調査結果 すでに中途者においては、「どちらかと言えば」を含めるとジョブ型を重視している割合が6割を超え、新卒者においては「今後」メンバーシップ型とジョブ型を同程度重視する割合が「近年」よりも7.7ポイント(8.9%→16.6%)増加、ジョブ型雇用への関心の高まりがうかがえる。日立や富士通など大手企業の「ジョブ型雇用導入」に関する報道を目にすることも多くなってきた。 こうした潮流をふまえ、組織はどのような検討をすべきか、そのヒントを探りたい。 ■ メンバーシップ型の特徴と顕在化する弊害 そもそも「メンバーシップ型」「ジョブ型」とは、何だろうか。日本型雇用システムをメンバーシップという切り口で分析し、ジョブ型の概念を日本で広めるきっかけになったとされる『新しい労働社会~雇用システムの再構築へ』(濱口桂一郎著)の内容を確認してみよう。
本書において、日本型雇用システムは「一種の地位設定・メンバーシップ契約」であり、その本質は「雇用契約それ自体の中には具体的な職務は定められておらず、いわばそのつど職務が書き込まれるべき空白の石板であるという点」だとしている。 そしてジョブ型雇用を、日本型雇用システム「ではない」世界一般の雇用慣行として捉えており「どういった種類の労働(職務=ジョブ)を行うのか、雇用契約で定め、その範囲内で労働者は義務を負うし、使用者は権利を持つ」といった趣旨の説明がされている。 この文脈からは、職務に関して無限定な契約をするのがメンバーシップ型、限定して契約をするのがジョブ型だと理解できる。また、日本型雇用システムにおいては、(職務に関して無限定な)メンバーシップ契約によって得る地位が「正社員」*2 ということになる。 そしていくつかの文献を勘案すると、メンバーシップ型の主な特徴は次の4つだ。(1)終身雇用、(2)年功序列型の賃金制度、(3)新卒一括採用、(4)(遠方への転勤を含む)ジョブローテーションによる社内育成(OJT)システム。 この特徴が、(キャリア中断を想定せず、勤務場所・時間の制約を比較的受けにくい)男性正社員との親和性が高い一方、そうではない労働者との「格差」の問題として近年、顕在化したといえる*3 。 総務省統計局労働調査によると2019年時点、労働者の38.3%(男性22.8%、女性56.0%)を占める非正規労働者の賃金水準は正社員100に対し64.9である。そして、50代まで右肩上がりで賃金が上昇する男性正社員と、非正規社員・女性との差も明確だ(下図)。 また経団連報告書では、企業の中途採用の抑制(結果、生み出されてしまった氷河期世代)、従業員の社外で雇用され得る能力の獲得しづらさ(結果、転職を含むキャリア形成検討の阻害)、画一的賃金制度によるエンゲージメントの低下、優秀な若年層の海外への人材流出への懸念など、さまざまなメンバーシップ型の弊害や課題が挙げられている。
April 15, 2021 at 04:05AM
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